Design Works
Project

蓮影の回遊庭

高齢夫婦の暮らしに寄り添う、低刺激・低管理型の住宅外構計画

睡蓮の池を中心とした庭の効果図
水面、植栽、塀、園路を重ねることで、日々の散歩が静かな習慣となる庭を計画しました。
Overview

プロジェクト概要

プロジェクト種別
住宅外構計画 / 高齢者配慮 / 水景設計 / 植栽計画
制作年
2025年
対象
70代の夫婦が暮らす住宅外構
役割
計画・設計・作図・パース

住まい手は、静かな環境とプライバシーを重視しており、庭の中で無理なく歩いたり、座ったり、植物の手入れをしたりできる空間を希望していました。

敷地内には駐車場を確保しながら、主庭、玄関アプローチ、デッキ、北側の細長い外部空間、家庭菜園や花の手入れができる場所を計画する必要がありました。女主人は花や野菜を育てることを好むため、日常的に植物と関われる高花壇や菜園スペースも取り入れています。

敷地寸法図
敷地条件と建物配置。主庭、北側空間など、複数の外部空間を持つ住宅外構として計画した。
Concept

静けさを歩く、蓮池の庭

この庭の中心にあるのは、睡蓮の池と、それをめぐる日常の散歩です。

日本庭園に見られる自然風の池をそのまま模倣するのではなく、水面を比較的整った幾何形の縁の中に収めることで、地面に置かれた「睡蓮の額縁」のような存在として計画しました。水面は、植物や空、光の変化を映す静かな鏡でもあります。

静かな晩年の暮らしの中で、自然は遠くへ求めに行くものではなく、日々の生活の中にそっと置かれるものだと考えました。その周囲を歩くことは、どこかへ急いで向かうためではなく、季節や光、植物の変化をゆっくり確かめるための行為です。

Design Approach

デザインの考え方

  1. 01

    池を中心にした回遊動線

    庭の中心に睡蓮の池を配置し、その周囲をゆっくり歩ける回遊動線を計画しました。園路は単なる移動のための通路ではなく、歩くたびに水面、植栽、塀、デッキの見え方が少しずつ変化するように構成しています。

  2. 02

    低刺激で安心できる空間

    強い色彩や過度な装飾ではなく、落ち着いた素材と控えめな植栽によって、静かに過ごせる庭を計画しました。外部からの視線は完全に遮断するのではなく、塀、格子、植栽を重ねることで段階的に和らげています。

  3. 03

    水紋を感じる園路デザイン

    園路には洗い出し仕上げを想定し、ところどころに水紋を思わせる円形のデザインを入れました。睡蓮の池から広がる波紋のように、庭全体に水の気配がゆるやかに広がることを意識しています。

  4. 04

    視線を導く植栽

    植栽は、空間を埋めるためではなく、視線を導き、歩行のリズムをつくる要素として計画しました。常緑樹、落葉樹、実もの、下草、水生植物を組み合わせ、四季の中で少しずつ表情が変わる庭としました。

  5. 05

    管理しやすい高花壇と菜園スペース

    かがみ込む動作を減らし、高齢者でも無理なく手入れができる高さとすることで、植物を育てる楽しみが日常の中で続くようにしています。

Drawings

図面・イメージ構成

全体配置図、動線計画、視線制御、植栽計画を分けて整理し、生活動線と庭の見え方を検討しました。

01

全体配置図

全体配置図

睡蓮の池を中心に、玄関アプローチ、回遊動線、デッキ、北側外部空間、サービススペースを連続させた。

動線とバリアフリー計画 詳細図を拡大して見る
02

動線とバリアフリー計画

池を中心にゆるやかに回遊できる構成とし、玄関までのアプローチにはスロープを設けた。歩行後に座って庭を眺められるよう、デッキと待合を休憩点として配置した。

視線制御と安心感の計画 詳細図を拡大して見る
03

視線制御と安心感の計画

道路側や隣地からの視線を、塀、格子、植栽によって段階的に和らげる計画とした。完全に閉じるのではなく、安心感と奥行きを両立させている。

植栽計画 詳細図を拡大して見る
04

植栽計画

高木・中低木・下草・水生植物を役割ごとに整理し、視線誘導、季節感、管理性のバランスを示す。

05

効果図 1|デッキから池を眺める

手前の睡蓮の池を主役に、待合、石灯籠、植栽帯、塗り壁風パネルの塀が奥へと重なる構成としました。背景となる塀の前には、植栽帯によって小さな丘陵のような高低差をつくり、左右には待合と石灯籠を配置し、デッキから眺めたときに景観の層が感じられるようにしています。

効果図 1|デッキから池を眺める 詳細図を拡大して見る
06

効果図 2|待合から庭を眺める

待合に座ったときの視線を想定したパースです。近景には睡蓮の池を配置し、そこから奥へ向かってもう一つの池、園路、植栽、塀が重なることで、庭全体の奥行きを感じられる構成としました。最も近い距離で水面や睡蓮を眺めながら、視線は遠くの池や植栽へと自然に抜けていきます。

待合には屋根を設け、晴れの日だけでなく雨の日にも座って庭を眺められる場所としました。雨が軒先から落ち、水面に波紋をつくる様子も、この庭で過ごす静かな時間の一部として考えています。

効果図 2|待合から庭を眺める 詳細図を拡大して見る
Planting Palette

使用植物の考え方

植栽は、多種類を見せるためではなく、空間の役割ごとに高さ、密度、管理性を整理して計画しました。視線誘導、季節感、管理性のバランスを意識し、上層から下層、水面まで連続した植栽構成としています。

High Canopy

高木・景観木

  • アオダモ
  • ホウオウチク
  • アオシダレ
  • ソヨゴ
  • イロハモミジ
  • 常緑ヤマボウシ

空間の焦点や奥行きをつくり、歩く方向や視線の先をやわらかく示す。

Mid Layer

中低木

  • ドウダンツツジ
  • ジンチョウゲ
  • サツキ
  • アセビ
  • ハクチョウゲ
  • ヤマアジサイ
  • ナンテン

境界や園路沿いに配置し、外部からの視線を和らげながら、歩行のリズムをつくる。

Ground

下草・地被

  • ヤブラン
  • タマリュウ
  • ハイゴケ
  • サギナ

足元を整え、地面の印象を安定させるとともに、雑草管理の負担を軽減する。

Water

水生植物

  • 睡蓮

池の主役としながら、水面を覆いすぎない密度に抑え、反射や余白を残す。

Reflection

学んだこと

この計画を通して、庭を「見せる空間」としてだけでなく、日々の生活を支える外部環境として考える重要性を学びました。高齢者にとっての庭では、美しさだけでなく、歩きやすさ、安心感、視線の落ち着き、管理のしやすさが大切であると感じました。

また、池や植栽を計画する際には、単に自然らしさを表現するのではなく、住まい手の生活リズムに合わせて、どのような距離感で自然を置くかが重要だと学びました。

Key Takeaways

  1. 01高齢者の暮らしに配慮した住宅外構を計画する力
  2. 02水景を中心にした空間構成と回遊動線の設計
  3. 03視線制御と心理的な安心感を考えた境界設計
  4. 04植栽の高さ、密度、管理性を整理する力
  5. 05手描き図面とパースによって空間イメージを伝える力
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